彼女の試合
麗子ちゃんは、実はテニス部に所属している。
ちなみに私は合唱部。これでも歌には自信がある。運動系はダメだけど。
その麗子ちゃんが市の大会に出るとかで、応援に行ったの時のこと。
「ようこそ、那美」
大会の貴賓席に堂々と座っている一選手に誰もつっこまないのは、お金や権力の賜物なんだろうか。
「麗子ちゃん、試合に出るんじゃなかったの?」
「わたくし、シードですから」
「そうなんだ……」
どうしても裏の動きを勘繰ってしまうのは、私が疑り深いと言うより、きっとそれが正しいからだと思う。
気のせいではなく、周りの視線が痛い……。
「日ごろの行いの賜物でしょうか」
しかも、本人気づいてないし。おじさんか、それとも執事さんとかの仕業か。
試合本番だけはズルはできないと思うけど……嫌な予感を拭いきれない。
どうか、ラケットで打った球がコンクリートにめり込んだりしませんように……。