迷走バレンタイン 終幕
運命の日は、思いのほか滞りなく過ぎていった。
本当に、何の問題もなく。
「目が死んでますわね……」
それはきっと気のせいではないんだろう。
「楽しみを失くしたサラリーマンのようですわよ?」
それもきっと気のせいではないんだろう。
「来年があるじゃない」
フォローがきつい。
確かに来年もこの日は来るんだろうけど、私の場合は例年と違うパターンが来るとは思えなかった。
枯れている。これから春を迎えるっていうのに、木枯らしが吹いてるくらいだよ。
「妥協しない所は素晴らしいと」
そんな事で褒められても。
「失恋よりはマシだと思いますけど?」
比較材料がそれならね……。
「やさぐれていないで先を見つめましょう、那美」
「……はーい」