迷走バレンタイン(2)
「嫌だね」
誰か紹介してとお兄ちゃんに話したところ、返ってきた返事がこれである。
「どうしてよ」
「俺の友達が自分の妹と付き合ってるなんて、俺は嫌なんだよ」
中途半端なシスコン振りだ。知らない人なら良いらしい。
というか、ただ単に自分の都合だけだよね、お兄様?
「それなら、彼女さんに相談してみてよ」
「何が楽しくて妹の男探しにあいつを付き合せなくちゃいけないんだ」
そうかなー。私だったら、けっこう楽しそうだと思うけど。
「ともかく、自分で何とかしろ」
自分で何とかならないから頼んでいるのに、そんな事を言われても困る。
どうやら相談する相手を間違ったらしい。今度はもっと行列のできそうな相手を選ばないと……って、そんな都合の良い人がいるならお兄ちゃんに頼んでない。
ああああ、バレンタインデーまで日にちがないというのにー!
また枯れた青春を過ごすのか、私。少しは発展しそうな物すら見つからないというのか。
「ううー……」
「わかったよ。一人なら、紹介してやれる奴がいる」
「本当に!?」
俄然乗り気になる私。しかし事態はどうも複雑だった。
「お前の友達の麗子って子。あの子の執事の息子が、うちの中学に通ってるらしくてな」
「え?」
思いがけない所からの情報。というか、いつの間にか麗子ちゃんの家の執事さんと仲が良くなってたんだね、お兄ちゃん。
「どうやらそいつが、中学でメイドと呼ばれてる女生徒に興味があるらしい」
あの中学でメイド。たぶん、私だろう。
「後は友達に聞くんだな。俺より詳しいはずだから」
「うん、わかった……」
話は再びきっかけともなった麗子ちゃんへ。訊けばきっと教えてくれそうだ。
でも、また麗子ちゃんとバレンタインデーの話をするのか。うーん……。