きっかけは……
長い髪をばっさり切る時って、何らかのきっかけがあるのだと思う。
私はあまり髪を伸ばした事がないから実感した事はないけど、たぶんそのはず。
だから麗子ちゃんが綺麗なストレートの長い髪をばっさり切ってショートにしてきた時は、やっぱり何かきっかけがあると思ったんだ。
「キャンドルの火が髪に燃え移ってしまいまして」
さすが麗子ちゃん。きっかけも普通じゃない。
「どうしてそんな事に?」
「我が家の執事が黒魔術に凝っておりまして」
「即行首にした方がいいよ、その人」
それで雇い主の髪を燃やしたんだから、少しも同情の余地はない。
その変な趣味だけでも十分だとは思うけど……。
「いえ、わたしの方から頼み事をしましたから」
「……頼み事?」
黒魔術に凝ってる人に頼み事?
それって、かなりろくでもない内容なんじゃ……。
「ところで那美。身の回りで何か変わった事は?」
「変わった事? 強いて言えば、うちのお兄ちゃんが原因不明の高熱を……って!」
「それはお気の毒ですわね」
「ちょ、麗子ちゃんその怪しい笑みは何!?」