麗子ちゃんとお兄ちゃん その6
夜九時を過ぎた頃、ようやくお兄ちゃんが家に帰ってきた。
その様子を言葉で表せば、これで決まりである。『ぐったり』
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「あ、ああ……」
見捨てた私に文句を言う気力もないらしく、瞳に力も感じられない。
普段はわりと飄々としているこの人が、ここまで変わってしまうなんて。麗子ちゃんの家で一体何が……?
「何があったの?」
「口に出したくない。ただ言えるのは、あの女は悪魔だって事だけだ」
そう話すお兄ちゃんの身体が、ガタガタと震えていた。ちなみに部屋はわりと暖かい。
「昔働いていた執事に似てるって言って、麗子ちゃん懐かしんでたから。てっきりその人が初恋の人で、お兄ちゃんにその面影が……なんて展開を想像してたんだけど」
「屋敷の金を盗んだ挙句、あの女の小さな頃のオネショの写真を学校にばらまいて姿を消した執事らしいがな」
「あー……」
何となくわかりました、お兄様。
私の予想とは違った修羅場を潜り抜けて来られたのですね。
「ごめんなさい」
とりあえず、謝っておいた。