麗子ちゃんとお兄ちゃん その2
「今度の土曜、麗子ちゃんが家に遊びに来るから」
そう話した相手は、すぐにテレビを消し、妙に真剣な顔でこちらに振り返ってくる。
「その子って、あれか。お前がメイドとかいう噂の原因になった子か」
「そうだけど……」
なんでそういう覚え方しかしてくれないかなー、この人は。
というか、自分の妹に変な噂が流れてるんだから、止めようとしてくれてもいいのに。
「ぶっちゃけ、苛められてるのか?」
昨今のニュースの影響をしっかり受けているらしい。
「そうじゃないよ。説明は難しいんだけど、ちゃんとした友達だから」
一応対等であり、一応親交も深いはずだ。
ただ、麗子ちゃんの性格やら容姿やらで、誤解は生まれやすい状況にはあった。
「お兄ちゃん、その日は部活休みでしょ?」
「ああ。別に、家にいられるとまずいなら、友達の家にでも行ってるぞ」
「そうじゃなくて。むしろ家にいて欲しいっていうか……」
「はあ?」
さっぱりわからないといった表情。
勘は鋭くないんだよね、この人。
「麗子ちゃんが興味あるみたいだから、その……」
「今度は俺を執事にするつもりか?」
「そういう興味じゃない……はず、だよ」
恋愛的な興味とも思えないけど、そういった興味でもないだろう。たぶん。
というか、『今度は』って何ですか、『今度は』って。
「私、メイドになってない!」
「でも妹がメイドってなんか自慢できる気がするから、そういう事にしとこうぜ」
「嫌に決まってるでしょ!」
そんな勝手な都合を受け入れられるはずがない。
まったく、どうしてこんな人がもてるんだろう。
みんな、外見や猫被ってる姿で夢を見すぎよ……。